BYDの売れ行きは、日本ではまだ小規模ながら着実に拡大中です。一方、世界では2025年に460万台超を販売する巨大メーカーへ成長しています。
「BYDって日本では全然売れていないのでは?」と感じる人もいるでしょう。実際、日本車と比べれば販売規模はまだ小さいものの、2025年の国内販売は3,742台、2026年上半期は2,334台まで増えており、「まったく売れていない」と片付けられる段階ではなくなってきました。
byd売れ行きは実際どう?日本では3年連続で成長
BYDの売れ行きを考えるとき、まず分けて考えたいのが「日本」と「世界」です。
世界販売だけを見れば、BYDはすでに新興メーカーと呼ぶには大きすぎる存在です。一方、日本ではトヨタやホンダ、日産、スズキなど国内メーカーが圧倒的に強く、BYDはまだ市場へ入り込んでいる途中にあります。
BYDが日本で一般向け乗用車の販売を本格的に始めたのは2023年。最初に投入したのがSUVタイプのEV「ATTO 3」で、その後「DOLPHIN」「SEAL」「SEALION 7」などへラインナップを広げてきました。
販売台数を見ると、変化が分かりやすくなります。
年・期間 日本での販売・登録台数 動き
2023年 約1,446台 乗用EV販売を本格開始
2024年 約2,223台 前年から増加
2025年 3,742台 前年比約68%増
2026年1〜6月 2,334台 前年同期比42.7%増
BYD Auto Japanによると、2025年は年間3,742台となり、3年連続の成長を記録しました。2026年上半期も2,334台となり、前年同期を42.7%上回っています。
数字だけ見れば、日本の自動車市場全体に対するシェアは依然として小さいです。
ただし重要なのは、「台数が少ないこと」と「売れ行きが悪化していること」は同じではないという点です。
BYDの場合、日本での絶対的な販売台数はまだ少ないものの、2023年から2026年にかけて販売規模そのものは拡大しています。
個人的には、BYDの現在地を「売れていない」と一言で評価するより、日本市場でようやく土台を作り始めた段階と見るほうが実態に近いと感じます。
なぜ日本のBYDは世界ほど売れていない?
BYDが日本で世界ほど圧倒的な売れ行きになっていない理由として、まず大きいのが日本市場そのものの特殊性です。
日本ではトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、ダイハツ、マツダ、スバル、三菱といった国内メーカーが非常に強く、販売店や整備拠点も全国に広がっています。
「近所に昔から付き合いのあるディーラーがある」「前の車と同じメーカーに乗り換える」という買い方も珍しくありません。
つまりBYDが日本で勝負する相手は、単にテスラなどのEVメーカーだけではありません。
長年かけて築かれた日本メーカーへの安心感そのものが最大のライバルともいえます。
さらに、BYDが日本へ投入してきた主力車種がBEV、つまり電気だけで走るEVだったことも大きなポイントです。
日本ではハイブリッド車の選択肢が非常に豊富です。
自宅充電環境がない人なら、「わざわざEVを選ばなくても燃費の良いハイブリッドがある」と考えるのは自然でしょう。
充電場所、マンションでの充電設備、長距離移動時の充電時間などを考えると、車両価格だけでEVを選びにくい事情があります。
これはBYD車だけの問題というより、日本におけるBEV全体が抱えてきた壁です。
その意味では、BYDの売れ行きを見る場合、「中国メーカーだから売れない」という単純な説明だけでは不十分だと私は考えています。
日本のユーザーが求める販売網、アフターサービス、下取り価格、充電環境、そしてハイブリッド車との比較まで含めて考える必要があります。
2025年からBYDの売れ行きが変わった理由は?
日本でBYDの販売が伸びている背景には、車種の拡大があります。
2025年4月には電動SUV「BYD SEALION 7」が日本で発売され、2025年の販売拡大を牽引したとBYD Auto Japanは説明しています。2025年5月には月間登録台数416台を記録し、当時の単月過去最高を更新しました。
そして、さらに大きな転換点となったのがPHEVです。
BYDはBEVだけを扱うメーカーではありません。
世界ではエンジンと大容量バッテリーを組み合わせるPHEVも大量に販売しており、BEVとPHEVの両方を持っていることがテスラとの大きな違いです。
2026年上半期の日本販売では、PHEVの「BYD SEALION 6」が累計1,254台登録されました。
上半期全体が2,334台ですから、SEALION 6だけで半分以上を占めた計算になります。
これはかなり興味深い結果です。
「BYDそのものが日本人に受け入れられない」という話であれば、PHEVを投入しただけでここまで販売構成が変わるとは考えにくいでしょう。
むしろ、日本ではブランド以上にパワートレインとの相性が販売を左右している可能性があると私は見ています。
自宅では電気で走り、遠出ではガソリンも使えるPHEVなら、充電切れへの心理的な不安を減らせます。
EVには興味があるけれど「充電だけで生活するのは少し不安」という人にとって、かなり現実的な橋渡し役になるからです。
世界ではBYDは売れている?2025年は460万台超
日本だけを見ているとBYDの規模を見誤りやすいのですが、世界に視点を移すと景色が一変します。
BYDは2025年に新エネルギー車を4,602,436台販売しました。
海外販売も初めて年間100万台を突破しています。BYD自身も2025年の世界販売が460万台を超えたことを公式に発表しています。
つまり、日本で年間数千台という数字だけを見て「BYDは売れていないメーカー」と判断すると、世界市場での実態とは大きくズレます。
2025年にはBEVだけでも約225万台規模を販売し、テスラを上回る規模に成長しました。
さらにBYDはBEVだけでなくPHEVを持っているため、「完全EVへ今すぐ移行したい人」と「まずPHEVから電動化したい人」の両方を狙えるのが強みです。
2026年に入ってからも海外展開は勢いがあります。
2026年7月のBYDグループのNEV販売台数は41万9,211台。乗用車ではBEVが23万3,105台、PHEVが17万7,967台となっています。
ここから見えてくるのは、BYDが単純な「中国国内向け格安EVメーカー」ではなくなっているということです。
個人的にBYDの怖さを感じるのは、最高級EVだけに集中するのではなく、大量販売できる価格帯からPHEV、SUV、高級ブランドまで横へ広げていることです。
日本メーカーにたとえるなら、1車種で勝負するというより、販売台数を積み上げられる複数の商品を次々用意する戦い方に近いでしょう。
テスラとBYD比較、なぜ販売ではBYDが強くなった?
「テスラ BYD 比較」で調べている人にとって気になるのは、なぜ後発の印象が強いBYDがこれほど販売を伸ばしたのかという点でしょう。
両社には、重要部品や技術を自社で抱える垂直統合型という共通点があります。
ただし、得意分野はかなり違います。
テスラはソフトウェア、OTAアップデート、車両制御、独自の充電ネットワークなど、「クルマをデジタル製品として進化させる力」が非常に強いメーカーです。
一方のBYDは、もともと電池事業に強みを持ち、バッテリーからモーター、電子部品、完成車まで幅広く自社グループで手掛けています。
その結果として生まれるのが、価格競争力です。
さらに販売台数で重要なのは、テスラが基本的にBEV専業なのに対して、BYDにはPHEVという別ルートがあることです。
BEV人気が鈍った地域ならPHEVを投入し、BEV需要の強い地域ならEVを売る。
この柔軟性はかなり大きいでしょう。
私は、BYDがテスラを販売台数で上回った理由を単純に「安いから」と見るのは少し違うと思っています。
安く作れる製造力に加えて、売れる地域に売れるパワートレインを持っていく商品構成の広さこそ、BYDの本当の強みではないでしょうか。
byd d9はアルファードのライバルになる?売れ行きとの関係
「byd d9 アルファード」と検索する人も増えていますが、正確には「D9」はBYD本体ではなく、BYDが展開するプレミアムブランド「DENZA(デンザ)」の大型ミニバンです。
D9は2022年に中国で登場し、全長5,250mm、全幅1,960mm、全高1,920mm、ホイールベース3,110mmという大型ボディを持ちます。
トヨタ・アルファード/ヴェルファイアよりひと回り大きく、3列シートに加え、豪華な2列目シートなどを備える中国市場向け高級ミニバンとして注目されてきました。
BEVだけでなくPHEVも設定されている点もBYDグループらしいところです。
ジャパンモビリティショー2023にもD9が展示されましたが、当時BYD Auto Japan側は日本での具体的な販売予定はないと説明していました。
ここでD9そのものの日本販売を予想することより重要なのは、BYDが「安いEVしか作れないメーカーではない」と示していることでしょう。
中国では高級ミニバン市場が大きく、D9のような商品まで成立しています。
アルファードやヴェルファイアが圧倒的なブランド力を持つ日本へD9を持ってきても、簡単に勝てるとは私は思いません。
特にリセールバリュー、販売網、法人需要、長期所有時の安心感ではトヨタ側に大きな蓄積があります。
ただし、D9の存在はBYDの販売戦略を理解するヒントになります。
大衆EVだけでなく、高級車、PHEV、SUV、ミニバンまで揃えられる商品開発力があること自体が、将来の販売拡大につながる可能性があるからです。
BYDの売れ行きはこれからどうなる?日本では「EV以外」がカギ
ここからは私見です。
BYDの日本販売について、私は「世界で売れているから日本でも一気に売れる」とは考えていません。
日本市場はかなり特殊だからです。
軽自動車、コンパクトカー、ハイブリッド、ミニバンという日本独自ともいえる売れ筋があり、メーカー系列の販売店や整備網も強力です。
海外で成功したSUVをそのまま持ってくるだけでは、大ヒットは難しいでしょう。
一方で、2026年上半期にSEALION 6が販売を大きく牽引した事実は重要です。
これは「中国車だから選ばれない」という固定観念だけでは説明しにくい結果です。
価格、装備、使い勝手、充電への不安などを含め、条件が日本人の生活に合えば購入候補に入る人は確実に存在するということでしょう。
さらにBYDは2026年7月、日本独自規格に合わせた軽EV「RACCO」を投入する動きを本格化させています。
軽自動車は日本の新車市場で非常に大きな割合を占めるカテゴリーですから、ここへ本気で参入する意味は小さくありません。
私はこの軽EV戦略こそ、今後のBYD売れ行きを判断する重要な試金石になると考えています。
ATTO 3やSEALは「海外で作ったBYD車を日本でも販売する」という印象が強い商品でした。
しかし、日本の軽自動車規格やスライドドア需要など、日本の生活環境を意識した商品になれば話は変わります。
つまり今後のBYDは、「日本人がBYDを好きになるか」より「BYDがどこまで日本人向けのクルマを作れるか」が勝負になるでしょう。
車選びをコスパ重視で考える私としても、メーカーの国籍だけで候補から外してしまうのは少しもったいないと感じます。
ただし、車両価格だけで決めるのもおすすめできません。
購入時には販売店までの距離、整備体制、急速充電環境、自宅充電の可否、保険料、数年後の下取り価格まで含めて比べるべきです。
特にリセールについては、日本で長年売れてきたトヨタやホンダなどと同じ感覚で考えないほうが安全でしょう。
BYDが日本で本当に定着したと判断できるのは、「新車が何台売れたか」だけでなく、中古車市場やアフターサービスまで含めた循環ができてからだと私は考えます。
まとめ
BYDの売れ行きは、日本と世界でまったく違う景色になっています。
日本では2023年の約1,446台から、2025年には3,742台まで伸び、2026年上半期も2,334台を登録しました。規模そのものはまだ小さいものの、販売は3年連続で成長しています。
一方、世界では2025年に460万台を超えるNEVを販売し、BEVだけでもテスラを上回る規模へ成長しました。2026年7月もグループ全体で41万9,211台を販売しており、世界的にはすでに巨大自動車メーカーの一角です。
したがって「BYDは売れていない」という言い方は、日本市場だけを見れば一部当てはまるものの、現在の実態を正確には表していません。
日本でのポイントは、BEVだけでなくPHEVのSEALION 6が販売を押し上げ始めたことです。
今後、日本向けの商品が増え、販売・整備拠点や中古車市場まで育っていけば、BYDの存在感は今より大きくなる可能性があります。
逆に、販売台数が増えてもアフターサービスやリセールに課題が残れば、日本メーカーから大量にユーザーを奪うところまでは進まないでしょう。
「世界ではすでに売れている。日本では、これから本当の勝負が始まる」——これが2026年時点のBYDの売れ行きを最も分かりやすく表す状況だと私は考えています。
よくある質問
BYDは日本で売れていないのですか?
日本メーカーと比べれば販売台数はまだかなり少ないですが、減っているわけではありません。2025年は3,742台、2026年上半期は2,334台となり、販売規模は拡大しています。
BYDとテスラはどちらが世界で売れていますか?
2025年はBYDのBEV販売が約225万台規模となり、テスラを上回りました。さらにBYDはPHEVも大量に販売しているため、BEVとPHEVを合わせたNEV全体では460万台を超えています。
BYD D9は日本でアルファードのライバルになりますか?
DENZA D9はアルファード/ヴェルファイアより大型の高級電動ミニバンですが、日本でアルファード並みに普及するかは別問題です。商品力だけでなく、ブランド力、販売網、リセール、整備体制まで含めて日本市場に適応できるかが重要になります。