初代ホンダ アコード インスパイアとは?AX-iから中古車まで徹底解説

1989年頃の上級4ドアハードトップをイメージした初代ホンダ アコード インスパイアと直列5気筒エンジンの雰囲気

初代ホンダ アコード インスパイアは、1989年に登場した直列5気筒+FFミッドシップを特徴とする上級4ドアハードトップで、現在は中古車の流通台数が少ない希少なモデルです。

なかでも上級グレードのAX-iは、本木目パネルやパワーシートなど当時としては豪華な装備を持ち、中古車では100万円台から200万円を超える車両まで見られるようになっています。

初代ホンダ アコード インスパイアとは?1989年に登場した上級ハードトップ

初代ホンダ アコード インスパイアは、1989年10月12日に「アコード インスパイア」として登場した4ドアハードトップです。型式はCB5で、同年に登場した4代目アコードから約1か月遅れて発売されました。

ホンダ公式の当時のプレス資料では、「新しい感性で時代をリードする大人のための、新世代上級ハードトップ」と位置付けられています。

「INSPIRE」という名前には、英語で「ひらめきを与える」「感動させる」といった意味があり、ホンダは「今までにない新しい走りを予感させるクルマ」として命名したと説明しています。

初代の姉妹車には3代目ビガーがありました。

アコードより上、レジェンドより下というポジションを狙ったモデルで、1980年代後半のバブル景気を背景に人気を集めていた上級セダン市場へ投入されています。

私はここが初代アコード インスパイアを理解するうえで大事だと思います。

単純に「アコードを豪華にした車」ではなく、アコードとレジェンドの間に新しい市場をつくろうとしたモデルだったのです。

当時のホンダは1985年からオースチン・ローバー・グループとレジェンド/ローバー800を共同開発していました。その一方で、アコードから一気にレジェンドへ上がると車格や価格の差が大きく、その間を埋める存在が必要になっていました。

そこで誕生したのがアコード インスパイアです。

ボディは4ドアのピラードハードトップで、低い全高と長いホイールベースを生かした伸びやかなスタイルを採用しました。

初期の5ナンバー仕様は全長4,690mm、全幅1,695mm、全高1,355mm、ホイールベース2,805mm。1990年8月時点のAX-iは車両重量1,330kgでした。

現在のクルマと比較すると全幅1.7m未満に収められていますが、ホイールベースは2.8mを超えています。

つまり、横方向に大きくするのではなく、前後方向をゆったり使って上級感を演出したプロポーションだったわけです。

ロングホイールベースとショートオーバーハングを組み合わせた薄く長いスタイルは、現在中古車情報のレビューでも高く評価されるポイントです。「このころのホンダのデザインが好き」「今見ても目がいく」といった趣旨の評価が見られるのも、この独特な姿が理由でしょう。


初代ホンダ アコード インスパイアの最大の特徴は直列5気筒とFFミッドシップ

初代ホンダ アコード インスパイアを語るなら、避けて通れないのが縦置き直列5気筒エンジンとFFミッドシップ・レイアウトです。

一般的なFF車では、エンジンを車体前部に横向きに搭載する方式が多く使われています。

ところがアコード インスパイアでは直列5気筒エンジンを縦置きにしました。

ホンダはこれを「FFミッドシップ」と呼んでいました。

もちろん、一般的なスポーツカーのようにエンジンを座席の後ろへ搭載するミッドシップではありません。前輪駆動のまま、重量物の配置を工夫することで前後重量配分や走行感覚を追求した独自の仕組みです。

エンジン横にディファレンシャルギアを配置する関係から、ドライブシャフトがオイルパンを貫通するという非常に特徴的な構造になっていました。

搭載されたのは専用設計のG20A型2.0L直列5気筒と、後に加わったG25A型2.5L直列5気筒です。

1990年8月時点の2.0 AX-iでは、G20A型の水冷直列5気筒SOHC20バルブを搭載。排気量は1,996cc、最高出力160ps/6,700rpm、最大トルク19.0kg・m(186.3N・m)/4,000rpmでした。

使用燃料は無鉛レギュラーガソリンです。

この「5気筒」という数字が面白いところです。

4気筒より滑らかさや上級感を狙いやすく、一方で6気筒よりコンパクトにまとめられる。その中間的なキャラクターを、アコードとレジェンドの中間に位置する車へ使ったところにホンダらしさを感じます。

トランスミッションは4速ATが中心ですが、2.0Lには5速MTも設定されていました。

足回りには前後ともダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用しています。

ホンダ公式も当時、「4輪ダブルウイッシュボーン・サスペンションが支えるゆたかな走りと快適な乗り心地」を特徴として掲げていました。

1990年8月のAX-iでは、前後205/55R15タイヤを装着。フロントブレーキはベンチレーテッドディスク、リアもディスク式で、最小回転半径は5.5mです。

スペックだけを並べれば、現在の2.0Lターボ車やハイブリッド車の数字には及びません。

しかし、このクルマの価値は最高出力の大きさだけではないでしょう。

直列5気筒を縦置きし、それを前輪駆動で成立させ、さらに前後ダブルウィッシュボーンを組み合わせる。今の量産車ではほとんど見られない設計思想そのものが、初代アコード インスパイアの魅力だと私は考えます。


ホンダ アコード インスパイア AX-iは何が違う?最上級グレードの装備を確認

初代アコード インスパイアの主なグレードは、上位からAX-i、AG-i、AZ-iの3種類でした。

なかでも検索されることが多い「ホンダ アコード インスパイア AX-i」は、シリーズの最上級グレードに位置します。

1990年8月時点のAX-iの新車価格は258万5,000円でした。

同時期のグレードを見ると、AZ-iの5速MTが194万円、4速ATが203万5,000円、AG-iの5速MTが218万9,000円、4速ATが228万4,000円でした。

価格差を見るだけでもAX-iが豪華仕様だったことが分かります。

主な仕様を整理すると次のようになります。

項目 2.0 AX-i(1990年8月)
型式 E-CB5
エンジン G20A 直列5気筒SOHC20バルブ
排気量 1,996cc
最高出力 160ps/6,700rpm
最大トルク 19.0kg・m/4,000rpm
駆動方式 FF
変速機 4速AT
全長×全幅×全高 4,690×1,695×1,355mm
ホイールベース 2,805mm
車両重量 1,330kg
乗車定員 5人
10モード/10・15モード燃費 9.3km/L
燃料タンク 65L

AX-iではフルオートエアコン、パワーウインドウ、集中ドアロック、クルーズコントロール、運転席パワーシート、15インチアルミホイールなどを備えていました。

サンルーフや本革シート、運転席SRSエアバッグなどは仕様によってオプション設定されていました。

安全面ではABSやトラクションコントロールも設定されています。

そして、今あらためて注目したいのが内装です。

AX-iとAG-iには天童木工製の本木目パネルが採用され、AX-iでは北米産ミルトルの玉杢、AG-iでは西アフリカ産ゼブラの柾目が使われていました。

現代の車では木目「調」の樹脂パネルが珍しくありませんが、当時のアコード インスパイアでは本物の木を使っています。

ここは単純なスペック表では伝わりにくい魅力です。

個人的には、初代アコード インスパイアを「高級車だったか」という視点だけで見るより、限られたサイズの中で素材とメカニズムにお金を使った上級車として見ると、その個性がより分かりやすいと思います。


初代アコード インスパイアは途中でどう進化した?

初代アコード インスパイアは1989年の登場後、安全装備や快適装備を段階的に充実させていきました。

1990年8月には、全車でリア3点式ELRシートベルトを標準化。2段モーションオートアンテナ、クルーズコントロール、電動格納式ドアミラーも装着グレードが拡大されました。

1991年5月にはハイマウントストップランプとシートベルトウォーニングを標準化し、TCS、運転席エアバッグ、ABSを全車にオプション設定しました。

1991年9月には特別仕様車「リミテッド」が設定されています。

そして大きな転機となったのが1992年1月30日です。

全長を140mm、全幅を80mm拡大した3ナンバーサイズの「インスパイア」が登場しました。

型式は2.5LがCC2、2.0LがCC3です。

全幅は最大1,775mm、全長は最大4,830mmとなり、より堂々としたボディへ進化しました。

一方で5ナンバーのアコード インスパイアもすぐになくなったわけではなく、モデルチェンジまで併売されました。

1992年4月にはアコード インスパイアに「スペシャルエディション」を設定。

1993年2月にはAG-iをベースとした特別仕様車「F-ステージ」が登場し、オートエアコンやボディ同色電動格納式ドアミラー、ダーク仕上げの本木目ゼブラパネルなどを装備しました。

1994年1月には25Giをベースとした「グランドステージ」も設定されています。

1995年1月に生産を終え、在庫販売を経て同年4月に販売終了しました。

その後の2代目では「アコード」の名が外れ、車名は単独の「インスパイア」になります。

つまり「アコード インスパイア」という名称自体が、初代を象徴するものなのです。

初代インスパイア系の新車登録台数は、販売終了前月までの累計で20万3,787台とされています。

歴代インスパイアの中でも初代が最も多く販売されたモデルでした。

約20万台売れたクルマなのに、今の中古車市場では数台しか見つからない。

この落差こそ、現在のアコード インスパイアが単なる「昔の中古セダン」ではなく、ネオクラシックカーとして見られ始めている理由の一つだと思います。


ホンダ アコード インスパイアの中古車はいくら?流通台数はかなり少ない

現在、初代ホンダ アコード インスパイアの中古車はかなり希少です。

今回の元資料では、大手中古車サイトの掲載台数は3〜4台程度となっていました。

中古車サイトによって集計時点や掲載条件が異なるため数字には差がありますが、「いつでも何十台から選べる車ではない」という点は共通しています。

ある中古車情報では平均価格156.9万円、価格帯97.4万〜218万円。

別の中古車情報では平均価格103.7万円、価格帯97.4万〜220万円とされています。

さらに別画面では中古平均価格110万円と表示されていました。

価格がサイトによって大きく違って見えるのは、そもそもの掲載台数が非常に少ないからです。

3台や4台しかない市場では、高価格のレストア車が1台追加されただけでも平均価格は大きく動きます。

そのため、初代アコード インスパイアは「平均相場」だけで判断しにくい中古車だと考えたほうがよいでしょう。

実際の掲載例を見ると、1989年式2.0 AX-i、走行10.5万kmの車両は本体価格97.4万円、支払総額141.9万円で掲載されていました。

この車両はG20A型直列5気筒、1,996cc、CB5、FF、4速ATという仕様です。

一方、1991年式の2.0 AX-iでレザーシート、サンルーフ、リアスポイラーを装備し、レストア渡しとされた車両は本体価格220万円、支払総額243.8万円でした。

1991年式AX-iで走行12.6万km、エクセーヌシートとスモークドガラスサンルーフを備える車両が本体価格168万円で掲載された例もあります。

また、1993年式AG-i、走行約5万kmのフルオリジナル車では、本体価格218万円、支払総額237.2万円という例も確認できます。

1994年式AG-iでは本体価格110万円、支払総額119.1万円という掲載例もありました。

こうして見ると、同じ初代でも100万円前後から200万円を超える車両まで価格差があります。

これは年式や走行距離だけでは説明できません。

  • オリジナル状態がどこまで保たれているか
  • 内外装の程度
  • 修復歴
  • サンルーフや本革などの装備
  • AX-i、AG-iなどのグレード
  • 整備履歴
  • レストア内容
  • 希少部品の状態

こうした条件の影響が非常に大きいと考えられます。

30年以上前の車になるため、「走行距離が少ない=安心」と単純には判断できません。

ゴム類、樹脂類、電装品、エアコン、シール類などは、走行していなくても時間によって劣化します。

逆に走行距離が多少多くても、長期間にわたって適切に整備されてきた車両のほうが購入後の安心につながる場合もあります。

ここは現代の3〜5年落ち中古車を選ぶ感覚とはかなり違うところです。


初代アコード インスパイアの中古車を買うならAX-iだけにこだわるべき?

AX-iは最上級グレードなので、初代アコード インスパイアを探す人にとって魅力的な存在です。

本木目パネルやパワーシート、クルーズコントロールなど、当時のホンダが考えた上級車らしさを味わいやすいからです。

一方、中古車として購入するなら、私はAX-iというグレード名だけで決めないほうがよいと考えます。

理由は単純で、現在は絶対的な流通台数が少ないからです。

欲しい色、年式、グレード、走行距離、装備をすべて指定すると、該当車がほとんどなくなってしまいます。

仮に状態の微妙なAX-iと、丁寧に維持されたAG-iが同時に出てきたなら、実用的にはAG-iを選ぶほうが満足できる可能性があります。

特に旧車の場合、購入価格だけを見て「安い」と判断するのはおすすめしにくいです。

現代車と違って、故障した部品をディーラーへ持ち込めば必ず新品部品ですぐ直るとは限りません。

純正部品が手に入りにくい場合、リビルト品、中古部品、修理対応などを検討する必要があります。

そのため中古車選びでは、車両そのものに加えて販売店が旧車やネオクラシックカーに慣れているかも重要な判断材料になります。

ここは、価格表には出てこない「見えない装備」だと私は思っています。

購入前には、エンジン始動時の状態、ATの変速、エアコン、パワーウインドウ、電動ミラー、パワーシート、サンルーフなどの電装系もできるだけ確認したいところです。

修復歴についても、単に「あり・なし」だけで判断せず、どの部分をどの程度修理したのか確認したほうが安心です。

中古車価格や在庫は日々変動するため、購入時点の最新情報は各販売店や中古車情報サイトで確認してください。


なぜ初代ホンダ アコード インスパイアは今でも注目されるのか?私の考察

初代アコード インスパイアを現在の基準だけで評価すると、不便なところは当然あります。

先進運転支援システムも現代的なディスプレイオーディオもなく、燃費も1990年8月のAX-iで10モード/10・15モード9.3km/Lです。

30年以上前の車ですから、維持にも現行車以上の手間がかかるでしょう。

それでも中古車価格が100万円を超え、状態によって200万円以上の価格が付く個体が存在します。

私は、この価値の中心にあるのは「速さ」ではなく、現代では再現しにくい設計と雰囲気の組み合わせだと考えています。

縦置きの直列5気筒。

FFミッドシップ。

前後ダブルウィッシュボーン。

低く長い4ドアハードトップ。

天童木工による本木目パネル。

これらをすべて持った新車を、今の市場で探すことはほぼできません。

現代のクルマは、安全性、燃費、室内空間、環境性能、コネクティッド機能など、総合性能では圧倒的に進歩しています。

一方で効率を高めれば高めるほど、メーカーごとの特殊なメカニズムは採用しにくくなります。

その意味でアコード インスパイアは、ホンダが「FFの上級車をどう作るか」に真正面から挑戦していた時代を形にしたクルマといえるでしょう。

特に興味深いのは、新車価格との関係です。

1990年8月のAX-iは258万5,000円でした。

30年以上経った現在、状態の良いAX-iに200万円を超える中古価格が付く例があります。

もちろん貨幣価値も物価も違うため、新車価格と現在の中古価格を単純比較することはできません。

それでも「古くなれば必ず安くなる」という通常の中古車とは違う段階に入りつつあることは分かります。

流通量がさらに減れば、良質なフルオリジナル車や状態の良いAX-iは、これまで以上に探しにくくなる可能性があります。

ただし、ここで「今後必ず値上がりする」と考えるのは危険です。

中古車価格は需要だけでなく、車両状態、部品供給、維持費、景気、旧車人気など多くの条件で変動します。

投資目的ではなく、このデザイン、この5気筒、この時代のホンダが本当に好きかで選ぶべきクルマだと私は感じます。

コスパを重視する私の目線では、日常の移動手段だけが目的なら現行のコンパクトカーやハイブリッド車のほうが圧倒的に合理的です。

それでもアコード インスパイアを選ぶ理由があるとすれば、合理性では測れない設計思想そのものを所有できる点でしょう。

「昔欲しかった」という人にとっては思い出の一台。

若い世代にとっては、今のホンダ車とはまったく違う時代の設計を体験できる一台です。

同じクルマでも、世代によって惹かれる理由が違う。この点も初代アコード インスパイアが今なお面白い存在である理由だと思います。


まとめ|初代ホンダ アコード インスパイアはAX-iを中心に再評価される希少車

初代ホンダ アコード インスパイアは、1989年10月に登場したアコードとレジェンドの間を埋める上級4ドアハードトップです。

G20A型2.0LやG25A型2.5Lの直列5気筒エンジンを縦置きし、FFミッドシップと前後ダブルウィッシュボーンを組み合わせた、現在では非常に珍しい設計を採用していました。

なかでもAX-iはシリーズの上級グレードで、1990年8月時点の新車価格は258万5,000円。本木目パネル、パワーシート、クルーズコントロールなど、当時らしい上級装備を備えていました。

中古車は現在かなり少なく、元資料では大手サイトで3〜4台程度の掲載にとどまっています。

価格も100万円前後から200万円超まで幅があり、AX-iかどうかだけでなく、内外装、整備履歴、修復歴、オリジナル度、電装品の状態などを含めて判断することが重要です。

初代アコード インスパイアは、単なる古い高級セダンではありません。

直列5気筒、FFミッドシップ、本木目、低く伸びやかなハードトップという、当時のホンダならではの発想を一台に詰め込んだモデルです。

中古車として気軽に買える存在ではなくなりましたが、だからこそ程度の良い一台に出会ったときは、価格だけではなく「この個体を今後きちんと維持できるか」という視点まで含めて選びたいところです。


よくある質問

初代ホンダ アコード インスパイアは何年式ですか?

アコード インスパイアは1989年10月に登場し、1995年1月に生産終了、同年4月に在庫販売を終えました。初期型の型式はCB5です。

1992年にはボディを拡大した3ナンバーの「インスパイア」も追加され、2.5LがCC2、2.0LがCC3となりました。

ホンダ アコード インスパイア AX-iはどんなグレードですか?

AX-iは初代アコード インスパイアの上級グレードです。

1990年8月時点では2.0L直列5気筒G20A型、4速ATを搭載し、フルオートエアコン、クルーズコントロール、運転席パワーシート、本木目パネル、15インチアルミホイールなどを装備していました。新車価格は258万5,000円です。

ホンダ アコード インスパイアの中古車はいくらですか?

元資料では大手中古車サイトの掲載価格帯がおおむね97.4万〜220万円前後となっており、レストア車などでは支払総額240万円を超える例も確認できます。

ただし掲載台数が3〜4台程度と非常に少ないため、平均価格は個々の車両によって大きく変動します。購入時は最新の在庫と価格を確認してください。